義父の精子で118人誕生 体外受精で79組出産 長野の不妊治療病院 ― スポニチ Sponichi Annex 社会

というニュースが有ったんですが、これは結構大きな問題の割にあまりそういう方向で語られていないので書いておこうと思います。

このニュースの何が問題かといいますと、体外受精や人工授精は第三者から精子を提供されるのが一般的なのにこの諏訪マタニティクリニックでは主に夫の父親からの精子提供を受けていることです。

と書いても「それの何が問題なの?」と思う人も多いと思います。
最大の問題はこのクリニックの医院長である根津氏が独特の倫理観を持って不妊治療をしていることです。
簡単にいえば血統主義ですね。「親子は血のつながりがあるべきだ」ということです。

それでもまだ何が問題かわからない人もいると思うので問題点を列挙してみようと思います。
  • まず、治療に明らかに思想が持ち込まれている
  • それも父系優先血統主義という前近代的な思想
  • そうした方法に社会的なコンセンサスがない
  • 血統主義から言えば生まれた子は夫の父の子となる。つまり夫の兄弟になる。
  • 精子提供者が分かっているという倫理的な問題
  • 生まれた子の視点から複雑な家族関係が負担にならないか
  • もしくは生まれた子に事情を説明できるのか
といったところになると思います。
逆にメリットもあります。
  • 血が繋がっているので生まれた子が祖父母から可愛がられ易い
  • 精子提供者が分かっているので遺伝情報を得易い(病気の治療などに有用)
  • 生まれた子が実の父親を知りたいという問題が無くなる
といった感じです。また根津医院長によると家族トラブルは今のところ無いそうです。

これらについて「夫婦が納得してやってるのならいいじゃないか」と言う人もいるかと思います。
夫婦はそれでいいと思いますが僕が問題にしたいのは「生まれた子が納得できるのか」ということです。

第三者による精子提供の場合、生まれた子の父親は心情的に明らかに育ての父親になるでしょう。
しかし、夫の父(妻の義父)が精子提供者の場合はそう単純にはいかなくなってしまいます。精子提供者である(生まれた子から見て)祖父が子育てに関わった場合はなおさらです。
心情的にどちらが父親であるか悩むことになるでしょう。

生まれた子に本当のことを言わなければいいという意見もあるかと思いますが、言えない時点で生まれた子本人に対して後ろめたいということを認めている事になってしまいます。

倫理的には第三者による精子提供が良いというコンセンサスの中、血統主義という思想を持ち込んで治療をするやり方は問題が多いと考えるべきでしょう。


AIDで生まれるということ 精子提供で生まれた子どもたちの声
非配偶者間人工授精で生まれた人の自助グループ(DOG: DI Offspring Group)
萬書房
2014-05-01